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モンマルトルのアパルトマン

Paris、Montmartreのアパルトマン:
都心の狭小住宅に、夢のある不思議な空間

間口2.5間。ものすごく狭い都心の狭小住宅に、仕事場と母親の介護を、通常の住宅機能の他に加えて欲しいというご要望。しかも間口が狭く、太陽の光があまり入らないという条件下で…。常識的な設計では無理なので、全く逆の発想を試みてみた。手前味噌になるが、その殆どが成功したのではないかと思う。

1階には、施術室と寝室の他、設備コアを全部まとめ上げた。これには㎜単位の調整を必要とされた。なかでも階段は、ぎりぎりの幅ながら、母親のために、蹴上(段の高さ)を一般よりも少し低くし、踏面も充分にとった。当初手摺にしがみついて上り下りしていたのが、半年も経たない内に足取りが軽くなっていた。階段がリハビリになったのか、久し振りに会って、同じ人だとはとても思えなかった。

壁、天井は、オフホワイト色。パルプ100%下地に、ホタテの貝殻としっくいを混ぜ合わせた塗料で塗装という、やさしい色とテクスチャーの仕上げ。調湿効果があり、空気の爽やかさが違う。階段を上がると、大きな空間が開けてくる。2階の空間は、この建物の設計で一番難しく、またポイントとなったところ。ただの矩形にすると息苦しいので、少し台形的な変形にもっていき、奥行き感と動きを空間に与えることにした。ところが、である。重心がヅレてくる…要するに、台形の空間の中心軸と、自分が身を置いた時の意識的な中心には、ズレがあったのだ。

人間というのは不思議なもので、その空間の中に、自分の中心軸というものがないと必ず精神的に不安定になる…設計する中でわたしが気付いた重要な原則のひとつであるが。中心軸と精神的な不安定感と空間の奥行きとをどのようにまとめて行くか…これがこの設計の一番のキーとなった。

結果として、敷地の狭さにかかわらず、空間的に2階に大きく、LDKとして1つにまとめられたのはこの建物の大きな魅力となっている。玄関の入口からリビングルームに上がると、暖炉があって、それがこの家のシンボルとなっている。暖炉を中心として、TVの位置との関係が無理のないかたちで、椅子を配置することができている。あちらこちらに天使の置き物があって、やさしいニュアンスを与えている。

狭小とは言っても、収納も3階に、物置やW-inクローゼットとして充分にあり、そしてなによりユニークなのが3階の屋外のインナーガーデン。外側からのプライバシーも守られている。植物の鉢を置いてガーデニングを楽しみ、今度はハンモックも吊って、都心の真ん中で日光浴をしたいそうだ。パリ、モンマルトルのアパルトマンにいるような雰囲気、と施主さんはとても気に入っている。

天使
天使2
 
 
アルミのアプローチ1
 
アルミのアプローチと袖壁  
広々としたサロン 
煙の出ない暖炉